工場から家

鉄骨造 リノベーション 
名古屋市中部、築35年ほどの町工場のリノベーション。かつて依頼主のご両親が営まれていた鉄工所が工場としての役割を終え、息子夫妻家族の住まいとして生まれ変わる。鉄骨造2階建ての建物の1階は階高5m、南北14.7m×東西9.7m無柱の大きな空間。2階は事務所でいくつかの部屋に仕切られていたが、間仕切りを解体するとこちらも勾配屋根のおおらかな空間が現れた。住宅には無い大きなスケールとしっかりした躯体、油の染み付いた柱やデッキプレートが鉄工所として使われてきた歴史を物語っている。それらはこの場所がもつ大きな資産であり、これからも活かされ、利用してゆく。

 

工場の大きなボリュームを使って立体的に
普通なら油にまみれた工場を撤去して新しい住宅を建てるのでしょうが、思い入れもあるこの工場から住宅へ転換することで、一般の住宅では味わえない大きなボリュームがあります。また、しっかりしたフレームと外壁や屋根は十分な性能を維持しています。解体費用などもリノベーションの費用に注ぎ込めばより豊かな空間ができると考えました。

立体的に広がるプラン
閉鎖的な工場の南のワンフレームを減築して、大きな開口を確保しました。 切り開いた部分は、スチールサッシで覆われた通り庭のようなバッファゾーン、北の庭と螺旋階段へのアプローチとなっています。バスルームの箱と書斎の箱は、元の建築から離れたように置くため、ロフトのような隙間が生まれ、その脇を螺旋階段で2階へ進むと大きな屋根の下に小さな小屋が2つ置かれています。
 
 
 
スチールサッシの通り庭と入れ子の子供室のバッファゾーンによる温熱性能維持


性能の役割分担
工場の躯体はしっかりしていてそのまま利用、外壁と屋根(外側のスキン)は風雨を防ぎ事の特化、内側のスキンに囲まれたLDKや個室は、現代の断熱性能になっています。バッファゾーンで1・2階は、おおらかにつながることで、温熱環境はバージョンアップされ、閉鎖的だった工場をおおらかに開いたプランにできたと思います。