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照護寺 本堂・庫裏

愛知・寺院・RC+W

 

寺院と街の関係

住宅地の一角にある寺院の在り方として、住職の要望は、まちへは程よく開きたいというものでした。開き過ぎず、閉じ過ぎず、緩やかにまちに開くための装置として、大きな屋根をつくり、軒の下の空間を設けました。屋根は、隣の公園、道路挟んだ川に向かって開いています。日本の建物は古来より、軒の下の空間を得意としています。軒の下の空間は内と外の中間領域となり、曖昧な空間を持つことで領域が段階的ににじむように広がっていきます。軒の下の緩衝帯は人を滞留させ、来訪者と緩やかなコミュニケーションが生まれ、相互の利益を生み出します。寺の活動が隙間からまちへ配信されるように考えました。

 

御本尊

ご本尊は、敷地の西側中央に東向きになるよう祀っていますが、参道は南の公園からとしているため、直角の動線になります。そのため、本堂の壁を斜めにし、本堂に入るとご本尊の正面に立てるようにしています。

本堂の格天井とコンクリート格子梁

構造について

鉄筋コンクリート造と木造の混構造です。1階から2階の外壁までをRCとし、大きな屋根を木造で架けました。1の天井スラブはワッフル構造となっており、14m×14mの無柱空間です。寺院建築がもつ、構造と形態が一体になった大きな空間が非日常を感じさせます。 コンクリートは高強度で躯体の性能を長く維持できるため、寺院の永続性を表現させています。 木造の屋根は120角の垂木を303間隔で架けています。化粧野地板をあらわし、コンクリートに負けない迫力と力強さがあります。大きな屋根は、寺院とまちを緩やかにつなぐ役割を果たします。

明暗から生まれる祈りの空間

1階の本堂は入口をガラスの開口とし、その他はコンクリートの壁で覆われます。ワッフル構造の天井が、春夏秋冬を通してさまざまな影をつくります。本尊の上にある窓からは、淡い光が漏れ、白い壁をうっすらと光らせます。 このような強弱をもたらす光は、多様化のあらわしです。光がグラデーションするように、宗教や生活が弾力的な連続性をあらわしています。

音響

お経と説法の音の伝え方は閉ざされてプランだから重要

本堂は収容人員百人の広さをもち、法事と説教が行われます。コンサートホールとは異なり、説教の場合は残響が無い方が良いとされます。どんな音空間にしたいのか住職と検討しました。14m×14mの無柱空間に斜めの壁を配置することで、フラッターエコーを和らげます。音は反射するたびに減るため、天井のワッフル構造もその役割をはたします。床の無垢フローリングは、床を100mm嵩上げして床下を設けることで低音を吸音させます。コンクリートは低音を反射させるため、内壁には杉板を貼り、3種類の巾をランダムに鎧張りとすることで、複数の周波数が拾えるようにしました。高音は、集まった人と椅子の座面を布地にすることで吸音します。
 

下見板原寸モック
 

音域を調整する下見板

心地いいお経と住職の講話の明瞭性を調整する。杉板の調整版。収まりを検討する原寸モックアップ
梁型枠施工中
 

コンクリートの格子梁

高さ1.5mの梁は空調歩路のように型枠が浮いている
格天井の仕上がり
 

本堂の格天井

14mの無柱空間を構成するコンクリート格子梁 本堂の格天井を表す。

庫裏

中庭に向かったロの字型の間取りからなる一体感と明るい暮らし

大きな屋根の下にある階段を上がると庫裏になります。本堂は、光を抑えることで象徴的にしましたが、庫裏では明るい開放的な空間としています。ただ、日常生活が寺院まで漏れないよう、中庭形式を採用しています。中庭からは、通風、採光をとりいれ、点在させた小さなテラスはサービスバルコニーとして、室外機や設備機器、物干し場となっています。おもてからは閉鎖的にしましたが、中庭から入る太陽の光は明るく、テラスを通して健やかな風が抜けるため、開放的な空間となっています。 和室は檀家が集まる場所でもあるため、単独にアプローチ出来るようにし、居住空間とは分けることができるようにしています。
 

ダイニングから中庭を見る

中庭
 

光と風を入れる中庭

リビング・キッチン
 

リビング・キッチン

個室
 
梁型枠施工中
 
格天井の仕上がり
 
軒の下
 
エントランス
 
アイアン
 
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